「チームの成績を残したいけれど、まず何から作ればいいのか分からない」
草野球で成績管理を始めるとき、多くの人が最初にたどり着くのがExcelやGoogleスプレッドシートです。追加費用がかからず、自分たちの好きな項目だけを残せます。
この記事では、実際に使える表の作り方を、項目の決め方から計算式まで具体的に説明します。あわせて、続けていくと出てくる手間についても正直に整理します。
まず決めるのは「何を記録するか」
いきなり表を作り始めると、だいたい途中で列が足りなくなって作り直しになります。先に「何を残すか」を決めてください。
野球の打撃成績で使われる項目を並べると、こうなります。
| 項目 | 記号 | 説明 |
|---|---|---|
| 打席 | PA | 打席に立った回数(四死球・犠打も含む) |
| 打数 | AB | 打席から四死球・犠打・犠飛などを除いた数 |
| 安打 | H | ヒットの数(二塁打・三塁打・本塁打も含む) |
| 二塁打 | 2B | |
| 三塁打 | 3B | |
| 本塁打 | HR | |
| 四球 | BB | |
| 死球 | HBP | |
| 打点 | RBI | |
| 盗塁 | SB |
ただし、全部を記録しなければいけないわけではありません。
三塁打が年に1本も出ないチームで三塁打の列を用意しても、ほとんど空欄が並ぶだけです。逆に列が多いほど入力の手間は増え、続かなくなります。
最低限これだけあればいい6項目
迷ったら、まずこの6つから始めてください。
- 打数
- 安打
- 四球
- 死球
- 打点
- 打席
打数と安打で打率、そこに四球と死球を足せば出塁率が出せます。打席は打率の計算には使いませんが、規定打席に届いたかどうかを見るときに必要になります。
二塁打・三塁打・本塁打を足せば長打率とOPSまで出せるので、余裕が出てきた段階で列を増やすのがおすすめです。得点も、率の計算には使いませんが、打点と並べるとチームの点の取り方が見える大事な項目です。余裕があれば早めに加えてください。盗塁は、足を使うチームなら加える、くらいで十分です。
なお、出塁率の正式な計算式には犠飛が入ります(後述)。犠飛を記録しないチームなら、分母から犠飛を省いて構いません。犠飛が0本なら結果は同じです。
打率・出塁率・長打率・OPSは計算式で自動化する
自作管理のいちばんの利点がここです。一度式を入れてしまえば、以降は数字を入れるだけで勝手に更新されます。
日本プロ野球(NPB)で使われている計算式はこうです。
打率 = 安打 ÷ 打数
出塁率 =(安打 + 四球 + 死球)÷(打数 + 四球 + 死球 + 犠飛)
これをスプレッドシートの式にすると、次のようになります。列を C=打数、D=安打、E=二塁打、F=三塁打、G=本塁打、H=四球、I=死球、J=犠飛 と並べた場合の例です。
| 項目 | 数式の例 |
|---|---|
| 打率 | =IF(C2=0, "", D2/C2) |
| 出塁率 | =IF(C2+H2+I2+J2=0, "", (D2+H2+I2)/(C2+H2+I2+J2)) |
| 塁打 | =D2+E2+2*F2+3*G2 |
| 長打率 | =IF(C2=0, "", (D2+E2+2*F2+3*G2)/C2) |
| OPS | =(出塁率のセル)+(長打率のセル) |
3つだけ補足しておきます。
1つ目。IF で0除算を避けてください。 打数0の選手がいると #DIV/0! が並んで表全体が読めなくなります。
2つ目。塁打の計算は少しコツがあります。 安打の列に二塁打・三塁打・本塁打も含めている場合、塁打は次の式で出せます。
塁打 = 安打 + 二塁打 + 三塁打 × 2 + 本塁打 × 3
安打の時点で全員1塁ぶん数えているので、二塁打には1、三塁打には2、本塁打には3を足せば足りる、という考え方です。
3つ目。表示は「.000」形式に設定してください。 そのままだと 0.333 と表示されます。Googleスプレッドシートなら「表示形式 → 数値 → カスタム数値形式」で .000 を指定すると、野球で見慣れた .333 になります。
投手成績を足す場合
投手成績を残すなら、投球回・自責点・奪三振・与四球あたりから始めれば十分です。
防御率 = 自責点 × 9 ÷ 投球回
ここで必ずつまずくのが投球回の入力です。
野球の「5回1/3」は小数の5.1ではありません。1/3回は1アウトを意味するので、5.1 と入力して計算すると防御率がずれます。
スプレッドシートで扱うなら、投球回そのものではなくアウト数で記録して、割り算のときだけ3で割るのが確実です。
| 表記 | アウト数 | 計算に使う値 |
|---|---|---|
| 5回 | 15 | 5.000 |
| 5回1/3 | 16 | 5.333 |
| 5回2/3 | 17 | 5.667 |
つまりアウト数の列を作って、防御率は =自責点*9/(アウト数/3) とすれば正確に出ます。
なお、7回制の草野球では防御率を7回基準で計算することもあります。その場合は式の 9 を 7 に変えるだけです。どちらを使うべきかは草野球の防御率は7回?9回?で詳しく整理しています。
シート構成は「試合ごと」+「累計」の2枚
シートの分け方で迷う人が多いところです。結論から言うと、2枚構成がいちばん扱いやすくなります。
1枚目:試合ごとの記録
1行 = 1選手の1試合ぶん。日付・対戦相手・選手名・各項目を横に並べます。試合をこなすたびに行が下に増えていく形です。
2枚目:累計成績
1行 = 1選手。SUMIF で1枚目から選手ごとに合計を拾い、そこに打率などの計算式を入れます。
=SUMIF(試合記録!$C:$C, $A2, 試合記録!D:D)
(1枚目のC列が選手名、A2が累計シートの選手名)
この形にしておくと、シーズンが変わっても1枚目に足していくだけで済みます。年で分けたい場合は1枚目に「年」の列を作り、SUMIFS で年を条件に加えれば、年別の成績も同じ表から出せます。
逆に、試合ごとにシートを新規作成していく作り方はおすすめしません。試合が20を超えたあたりで集計が破綻します。
ExcelとGoogleスプレッドシート、どちらがいいか
チームで使うなら、Googleスプレッドシートのほうが向いています。
| Excel | Googleスプレッドシート | |
|---|---|---|
| 費用 | 有料(無料版あり) | 無料 |
| 共有 | ファイルを送る必要がある | URLを共有するだけ |
| 同時編集 | 条件付き | できる |
| スマホ入力 | できる(やや窮屈) | できる(やや窮屈) |
| オフライン | 強い | 設定が必要 |
草野球では「入力する人が1人に固定できない」ことがよくあります。誰かが休んだ日に別の人が入力できる状態にしておくには、URLひとつで開ける共有のしやすさが効いてきます。
すでにExcelで作っているなら、そのままGoogleドライブにアップロードしてスプレッドシート形式に変換することもできます。
自作管理のいいところ
表を自分で作る方法には、はっきりした利点があります。
- 費用がかからない
- 自分たちが見たい項目だけを残せる(チーム独自の項目も自由に足せる)
- 他のサービスに縛られない。ファイルはずっと手元に残る
- 仕組みが全部見えている。数字がおかしいとき、式をたどれば必ず原因が分かる
- 表計算に慣れている人なら、グラフも自由に作れる
特に最後の点は大きくて、「自分たちのチームにとって意味のある数字」を自由に定義できるのは、既製のアプリにはない強みです。
続けていくと増えていく手間
一方で、シーズンを重ねるうちに手間が増えていくのも事実です。公平に書いておきます。
選手が増えると行が増える。 助っ人を含めて30人を超えたあたりから、累計シートの管理が重くなってきます。
シーズンをまたぐと構造を考え直すことになる。 「今年の成績」と「通算成績」を両方出そうとすると、シートの設計を見直す必要が出てきます。
ランキングは自分で作る。 打率順に並べたい、規定打席に届いた選手だけ表示したい、といったことをやろうとすると SORT や FILTER を組む必要があります。規定打席をどう決めるかは草野球の規定打席は何打席?で整理しています。
スマホからの入力がつらい。 これが実際にいちばん効きます。試合後にグラウンドで入力しようとすると、横に長い表をスマホでスクロールしながら正しいセルを探すことになります。結局「あとでPCで入力しよう」となって、そのまま溜まっていくパターンが多いです。
式が壊れても気づきにくい。 行の挿入や並べ替えで参照がずれると、間違った数字が正しい顔で表示され続けます。
表を自作する以外の選択肢もある
ここまで読んで「自分たちのチームなら十分回せそうだ」と思えたなら、スプレッドシートで作るのがいちばん早くて自由です。実際、その規模で十分なチームはたくさんあります。
一方で、「スマホから入力できないと続かなさそう」「ランキングまで作る余力はない」と感じたなら、草野球向けの成績管理アプリを使うという選択肢もあります。
私たちが作っている My Success もそのひとつです。打席ごとに結果を選ぶ方式で、打数・安打を自分で数える必要がありません。打率・出塁率・長打率・OPS・防御率は自動で計算され、チーム内ランキングもそこから作られます。無料でチームを作れます。
どちらが正解ということはありません。表計算のほうが自由度は高く、アプリのほうが入力と集計の手間が少ない、という違いです。まずスプレッドシートで1シーズン試してみて、手間が気になったら乗り換える、という進め方でも遅くありません。
まとめ
草野球の成績をExcel・スプレッドシートで管理するときのポイントです。
- 記録する項目は最初から欲張らない。打数・安打・四球・死球・打点・打席の6つから始めれば十分
- 打率・出塁率・長打率・OPSは計算式で自動化する。
IFで0除算を避ける - 投球回は小数で入れない。アウト数で持って、割るときに3で割る
- シートは「試合ごと」+「累計」の2枚構成にする
- チームで共有するならGoogleスプレッドシート
まだ何も記録していないなら、草野球の成績は途中からつけてもいい?もあわせてどうぞ。シーズン途中からの始め方をまとめています。
参考
- 日本野球機構(NPB)「記録の計算方法」