5回を投げて4失点。でも、そのうち3点はエラーがきっかけだった——。
こういう試合で「今日の自責点はいくつ?」と聞かれて、すぐに答えられる人は多くありません。防御率に直結する数字なのに、決め方があまり知られていないのが自責点です。
この記事では、自責点と失点の違いと、草野球での現実的な付け方を整理します。
失点と自責点の違い
| 失点 | 自責点 | |
|---|---|---|
| 何を数えるか | 投手の責任として記録された得点すべて | そのうち守備のミスによらない得点 |
| エラーが絡んだ得点 | 含む | 原則含まない |
| 使い道 | 投手が何点取られたか | 防御率の計算 |
公認野球規則 9.16 は、自責点を「投手が責任を持たなければならない得点」と定義しています。
つまり、守備のミスで入った点まで投手のせいにしないための数字です。だから防御率は失点ではなく自責点で計算します。
基本の考え方:「エラーがなかったら」でイニングを作り直す
自責点を決めるときの基本は、その回をエラーがなかったものとして作り直してみることです。
- エラーがなければアウトだった打者は、アウトだったと考える
- そうして作り直したイニングで入っていたはずの点が、自責点
公認野球規則の例をもとに、2つのケースを見てみます。
例1:2アウトからのエラーの後に本塁打
- A、Bが凡退して2アウト
- Cが遊ゴロ。ショートがエラーしてCは一塁へ
- Dが2ラン本塁打
- Eが三振でチェンジ
2点が入りましたが、自責点は0です。エラーがなければCの遊ゴロで3アウト、この回は終わっていたからです。
このように、エラーがなければ3アウトになっていたはずの後に入った点は、すべて自責点になりません。本塁打で入った点でも同じです。
例2:暴投で入った点
- Aが凡退して1アウト
- Bが三塁打
- Cの打席で暴投。Bが生還
- C、Dが凡退してチェンジ
この1点は自責点です。暴投は投手の投球ミスなので、四球やボークと同じく投手の責任になります。
自責点になるもの・ならないもの
規則では、自責点の判断材料を次のように分けています。
| 自責点になる要素 | 自責点にならない要素 |
|---|---|
| 安打、四球(故意四球を含む)、死球 | 守備の失策(エラー) |
| 犠打、犠飛、盗塁 | 捕逸(パスボール) |
| 野手選択(野選) | 捕手・野手の妨害、走塁妨害 |
| 暴投、ボーク | ファウルフライの落球 |
草野球で特に間違えやすいのはこの2つです。
四球で出した走者の得点は自責点。 「エラーではないから」ではなく「投手が出した走者だから」です。フォアボールから崩れた失点は、しっかり自責点になります。
暴投は自責点、捕逸は自責点ではない。 どちらもキャッチャーが捕れなかった球ですが、投手の投球が原因なら暴投、捕手が普通に捕れる球を逸らしたなら捕逸です。この区別がそのまま自責点に影響します。
エラーで進んだ走者の扱い
少しややこしいのが、「安打で出た走者が、エラーで進塁してから還った」ケースです。
規則の考え方は、そのエラーがなくても、その後のプレーで還れていたかで判断します。
- 単打で出た走者が捕逸で二塁へ、次打者の単打で生還 → 捕逸がなければ二塁にいないので、単打1本で還れたとは限らない。自責点にしない
- 同じ状況で、次打者が三塁打 → 一塁からでも還れたので自責点にする
判断に迷う場合は、投手に有利なように(=エラーによる進塁として)扱うのが規則の考え方です(9.16(f))。
継投したときの自責点
途中で投手が交代した場合、前の投手が残した走者が還ったら、その失点は前の投手に付きます(9.16(g))。
例えば、先発が満塁の場面で降板し、リリーフが初球を打たれて走者一掃の二塁打。3点はすべて先発の失点です(エラーが絡んでいなければ自責点も先発)。リリーフには付きません。
また、交代前にエラーがあっても、リリーフ投手はその恩恵を受けられません(9.16(i))。交代後のアウト数から、改めてイニングを数え直します。そのため、チームとしては自責点でない点が、リリーフ投手個人には自責点として記録されることがあります。
草野球で継投が多いチームは、少なくとも「残した走者の失点は前の投手」というルールだけは揃えておくと、投手成績の納得感が大きく変わります。
草野球では誰がどう決める?
プロ野球では公式記録員が判定しますが、草野球にはいません。現実的には次のように決めておくのがおすすめです。
1. スコアをつける人が決める
エラーかヒットかの判定と同じで、判定する人を決めておけば揉めにくくなります。この考え方はエラーで出塁したら打率は下がる?でも詳しく書いています。
2. 最低限のルールだけ揃える
イニングの細かな作り直しまで毎回やるのは大変です。まずは次の3つだけでも揃えておけば、大きなズレは防げます。
- エラーで出塁した走者が還った点は、自責点にしない
- エラーがなければ3アウトだった後の点は、自責点にしない
- 四球・暴投がきっかけの点は、自責点にする
3. 試合当日に決めて残す
自責点は、後から思い出して付けるのがいちばん難しい数字です。試合直後、スコアが手元にあるうちに決めてしまいましょう。
自責点は防御率にどう効く?
防御率は、自責点を投球回で割って出します。
防御率 = 自責点 × 9 ÷ 投球回
冒頭の「5回4失点、うち3点はエラー絡み」の投手で、自責点が1だった場合、
- 自責点で計算:1 × 9 ÷ 5 = 1.80
- 失点で計算してしまうと:4 × 9 ÷ 5 = 7.20
と、4倍もの差になります。エラーの多い試合ほど、失点と自責点を分けて記録する意味が大きくなります。
7回制の草野球で防御率を7回基準にするか9回基準にするかは、草野球の防御率は7回?9回?で整理しています。
My Successでの記録
My Success の投手成績は、投球回・自責点・奪三振・与四球の4項目を試合ごとに入力する形です。入力した自責点と投球回から、防御率が自動で計算されます(チーム設定で7回換算・9回換算のどちらかを選べます)。
投手個人の「失点」を入力する欄はありません。自責点を入力するときは、この記事の考え方で、エラーが絡んだ点を除いた数を入れてください。チームとして何点取られたかは、試合のスコアに残ります。
まとめ
- 失点は投手に記録される点すべて、自責点はそのうち守備のミスによらない点
- 基本は「エラー(と捕逸)がなかったら、この点は入っていたか」でイニングを作り直す
- エラーがなければ3アウトだった後の点は、本塁打でも自責点にならない
- 四球・暴投・ボークは投手の責任。捕逸は自責点にならない
- 継投では、前の投手が残した走者の失点は前の投手に付く
- 防御率に使うのは自責点。草野球では判定する人と最低限のルールを先に決める
自責点を丁寧に付けておくと、「エラーに足を引っ張られた好投」がきちんと数字に残ります。投手にとっては、それがいちばんの報いかもしれません。
参考
- 日本野球機構(NPB)「公認野球規則 9.00 記録に関する規則」(PDF)
- 日本野球機構(NPB)「記録の計算方法」