会心の当たりを打ったのに、相手のショートがはじいて出塁。ベンチに戻ってから「今のってヒット?エラー?」と揉める——草野球ではよくある場面です。
この記事では、エラーで出塁したときに打率・打数・安打がどう記録されるのかを、公認野球規則にもとづいて整理します。そのうえで、記録員のいない草野球でどう運用すればいいのかまで説明します。
エラー出塁は安打にならず、打数に入る
まず記録上の扱いです。
- 安打にはならない
- 打数には入る
- 結果として、打率は下がる
打率の計算式はシンプルです。
打率 = 安打 ÷ 打数
エラー出塁は分母の打数だけを増やし、分子の安打は増やしません。だから打率が下がります。
感覚的には「アウトになっていないのに打率が下がるのは損だ」と思うところですが、記録上はアウトになったのと同じ扱いになります。
数字で見るとどれくらい下がるのか
10打数3安打の選手で考えてみます。この時点の打率は.300です。
| 次の打席の結果 | 打数 | 安打 | 打率 |
|---|---|---|---|
| 安打 | 11 | 4 | .364 |
| エラーで出塁 | 11 | 3 | .273 |
| 凡退(ゴロ・フライ) | 11 | 3 | .273 |
| 四球 | 10 | 3 | .300 |
エラー出塁は、打率の上では凡退とまったく同じです。
一方で四球は打数に入らないため、打率は変わりません。「出塁しているのに扱いが違う」のはここです。
出塁率はどうなる?
出塁率も下がります。NPBの計算式はこうです。
出塁率 =(安打 + 四球 + 死球)÷(打数 + 四球 + 死球 + 犠飛)
エラー出塁は分子のどれにも当てはまりません。一方、打数として分母には入ります。
つまり分母だけが増えるので、出塁率も下がります。
実際には塁に出ているのに出塁率が下がるのは直感に反しますが、出塁率はあくまで「打者自身の力で出塁した割合」を測る指標なので、相手のミスによる出塁は含めない、という考え方です。
打点が付くことはある?
「エラーの間に三塁ランナーが還った。打点は付く?」——これもよく揉めるところです。
公認野球規則では、失策がからむ得点について次のように扱われます。
- 失策による得点の場合、無死または一死で、失策がなくても得点できたと判断されるときにのみ打点が記録される
- 打者に併殺打が記録されたときは、走者が得点しても打点は記録されない
つまり「エラーだから打点なし」でも「還ったから打点あり」でもなく、状況と判断によって変わります。
分かれ目は「その失策がなくても得点していたか」です。
- 内野ゴロの間に三塁走者が生還した。打者への送球がそれて打者も生きた → ゴロを打った時点で走者は還っていたと判断されるなら打点が付く
- 平凡なフライを野手が落球し、その隙に三塁走者が還った → 捕っていれば走者は還れていないので打点は付かない
草野球でここまで厳密に判断するのは現実的ではないので、後述するとおりチームで方針を決めておくのが実用的です。
「安打かエラーか」は誰かが判断している
ここが本題です。エラー出塁の扱いが決まる前に、そもそも「今のはエラーなのか」を誰かが判定しているという前提があります。
公認野球規則9.12(失策の記録)では、失策はおおむね次のように定義されています。
野手が普通の守備行為(オーディナリー・エフォート)を行えば、打者をアウトにできた、あるいは走者の進塁を防げたと記録員が判断したにもかかわらず、守備を誤って打者を出塁させたり走者を進塁させた場合
重要なのは「普通の守備行為」と「記録員が判断した」の2点です。
つまり、捕れなかった=エラー、ではありません。
- 深いショートへの強い当たり。かろうじて追いついたがはじいた → 普通の守備では捕れない打球と判断されれば安打
- 正面のゆるいゴロをファンブル → 失策
同じ「捕れなかった」でも、打球の強さ・位置・守備位置によって結論が変わります。プロ野球でも記録員が判断に迷う場面はあり、判定が後から訂正されることすらあります。
草野球では誰が判定する?
プロ野球には公式記録員がいますが、草野球にはいません。ここが最大の違いです。
現実的には、次のどれかになります。
- スコアラー役の人が決める(いちばん揉めない)
- ベンチにいる監督・キャプテンが決める
- 打った本人が申告する(かなり揉める)
このうち、打った本人が決める形はおすすめしません。 自分の打率がかかっているので判断が甘くなりがちですし、「あの人はいつもヒットにする」という不満が必ず出ます。
現場で「今のはヒットでいい?」と全員で相談するのも、試合が止まるうえに毎回結論が変わります。
チーム内で決めておきたい3つのこと
厳密な公式記録を再現する必要はありません。ただし、基準がブレないことは必要です。同じような打球が、日によってヒットになったりエラーになったりすると、シーズン通算の打率が意味を持たなくなるからです。
先に決めておくと揉めにくいのは、この3つです。
1. 誰が決めるか
スコアをつける人が判定する、と決めてしまうのがいちばん簡単です。その人が試合ごとに変わっても、「そのとき記録している人が決める」というルール自体が共有されていれば揉めません。
2. 迷ったらどちらにするか
「迷ったらヒット」「迷ったらエラー」のどちらでもいいので、先に決めておくことが大事です。決めていないと、そのつど有利なほうに寄っていきます。
草野球は守備の技量に幅があり、プロなら確実にアウトの打球が抜けることも珍しくありません。実態に合わせて「迷ったらヒット」寄りにしているチームも多いです。
3. その場で決めて、あとから変えない
試合中に決めて記録し、後日「やっぱりあれはヒットだった」と変更しない、というルールにしておくと運用が安定します。
「厳密さ」と「続けやすさ」は分けて考える
公認野球規則どおりに判定するのが理想ではありますが、草野球で毎打席それを求めると、記録係の負担が上がって続かなくなります。
分けて考えるとすっきりします。
- 公式の記録基準 … 何が正しいかの拠りどころ。迷ったときに立ち返る
- チームの運用ルール … 実際に毎試合まわすための決めごと
大事なのは、チーム内で同じ基準が使われていることです。基準が揃っていれば、チーム内のランキングは比較する意味を持ちます。この考え方は規定打席の決め方とも共通していて、草野球の規定打席は何打席?でも同じ話をしています。
My Successでの扱い
My Success では、打席ごとに結果を選んで記録します。選択肢のなかに「エラー出塁」があり、これを選んだ打席は次のように集計されます。
- 打数にカウントされる
- 安打にはカウントされない
- 出塁率の分子には入らない(分子は安打+四球+死球)
結果として、打率も出塁率も公式の計算どおりに下がります。四球・死球を選んだ場合は打数に入らないので、打率は変わりません。
打点は打席の結果とは別に、+−ボタンで入力する形になっています。エラーがからんだ場面で打点を付けるかどうかは、上に書いたとおり判断が必要なので、チームの方針に合わせて入力してください。
なお、安打かエラーかの判定そのものをアプリが代わりに行うことはできません。そこは記録する人が決める部分です。
まとめ
エラー出塁の扱いを整理します。
- エラーで出塁しても安打にはならず、打数には入る。打率は下がる
- 出塁率も下がる。分子には入らず、分母だけ増えるため
- 打点は状況次第。失策がなくても得点できたと判断される場合などに記録される
- そもそも「安打かエラーか」は記録員の判断。捕れなかった=エラーではない
- 草野球では誰が決めるか・迷ったらどちらにするかを先に決めておく
打率がどう積み上がっていくかを自分たちで管理したい場合は、草野球の成績をExcel・スプレッドシートで管理する方法もあわせてどうぞ。
参考
- 日本野球機構(NPB)「記録の計算方法」
- 日本野球機構(NPB)「公認野球規則 9.00 記録に関する規則」(PDF)
- 日本野球機構(NPB)「【記録員コラム】実は難しい打点の判断」