ショートゴロを一塁へ送球。ワンバウンドの送球を一塁手が捕れずに打者セーフ——。これは、ショートのエラー?ファーストのエラー?
草野球では、エラーが誰に付くかで揉めることも少なくありません。この記事では、守備側から見た失策の記録を整理します。打者側から見た「エラー出塁と打率」の関係はエラーで出塁したら打率は下がる?をご覧ください。
失策が記録される基本
公認野球規則 9.12 は、失策を「攻撃側チームを利する行為をした野手に与えられる」ものとしています。具体的には、
- 打者の打撃を延ばしたり(ファウルフライの落球)
- アウトになるはずの打者・走者を生かしたり
- 走者に1つ以上の進塁を許したりする
ミスプレイ(ファンブル、落球、悪送球など)をした野手に失策が記録されます。
判断の基準は、ヒットかエラーかの判定と同じく「普通の守備行為をすればアウトにできたか」です。ボールに触れたかどうかは関係なく、平凡なゴロが股の間を抜けた場合も、捕れるはずのフライを触れずに落とした場合も失策になります。
捕球エラーと送球エラー
| 場面 | 失策が付く野手 |
|---|---|
| ゴロをはじいて打者が一塁セーフ | ゴロを捕ろうとした野手 |
| 捕れるフライを落とした | フライを落とした野手 |
| 送球がそれて(高い・低い・横にそれた)打者がセーフ | 送球した野手 |
| 時機を得た正確な送球を、受けた野手が捕り損なった | 送球を受けた野手 |
| 時機を失した送球を、受けた野手が止められなかった | 送球した野手 |
| ボールを持って塁や走者にタッチすればアウトなのに、タッチし損なった | タッチし損なった野手 |
冒頭の場面なら、送球が「普通に捕れる送球」だったかどうかで決まります。一塁手が普通に捕れるショートバウンドだったなら一塁手の失策、とても捕れない送球だったなら遊撃手の失策です(9.12(a)(5)・(8))。
また、正確な送球でも、塁や走者に当たって跳ね返り、走者が進んだ場合は、送球した野手に失策が記録されます(9.12(a)(7))。厳しく見えますが、規則ではそう定められています。
1つのプレーで失策はいくつ?
悪送球で走者が何人進んでも、何塁進んでも、失策は1つだけです(9.12(b))。
例えば、悪送球がベンチに入って走者2人が生還した場合も、失策は1つです。
失策にならないプレー
次のような場合は、失策を記録しません。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| ゴロをきちんと処理したが、送球が間に合わなかった | 緩慢な動きだけでは失策にしない |
| 投手が一塁のベースカバーに入らず打者がセーフ | 判断の誤りは失策にしない |
| 間に合わない塁へ投げた(悪送球ではない) | 判断の誤り |
| 普通に捕っていても間に合わなかった送球がそれた | アウトにできなかったので失策にしない(余分な進塁がなければ) |
| 併殺を狙った最後の送球がそれた | 余分な進塁がなければ失策にしない |
| 盗塁を刺そうとした捕手の送球がそれた | 走者が狙った塁で止まれば失策にしない |
| 暴投・捕逸 | 別の記録(失策ではない) |
| 四球・死球 | 投手・捕手の失策にはしない |
判断の誤りが失策にならない一方で、判断の誤りが実際のミスプレイにつながった場合は失策です。例えば、アウトカウントを間違えてボールをマウンドに転がし、その間に走者が進んだ場合などです(9.12(a) 原注3)。
暴投・捕逸については暴投と捕逸の違いとは?で解説しています。
野選との違い
野選(フィルダースチョイス)も、打者が安打なしで一塁に生きるプレーですが、失策とは別物です。
| 失策 | 野選 | |
|---|---|---|
| 何が起きたか | 捕球・送球などのミスプレイ | 別の走者を狙って投げた(ミスではない) |
| 野手の失策 | 付く | 付かない |
| 打者の打数・安打 | 打数1・安打0 | 打数1・安打0 |
野手が前の走者を狙ったこと自体は「選択」であって、ミスではありません。その送球がそれて、アウトにできたはずの走者を生かした場合に、はじめて失策になります。詳しくは野選(フィルダースチョイス)とは?で解説しています。
守備率の計算方法
守備率は、公認野球規則 9.21(d) で次のように定義されています。
守備率 =(刺殺 + 補殺)÷(刺殺 + 補殺 + 失策)
- 刺殺:自分でアウトにした数(フライを捕った、塁を踏んでアウトにした、など)
- 補殺:アウトになるまでに送球などで関わった数
- 失策:エラーの数
分母の「刺殺+補殺+失策」は守備機会と呼ばれます。
例えば、刺殺20・補殺30・失策5の遊撃手なら、
(20 + 30)÷(20 + 30 + 5)= 50 ÷ 55 = .909
です。
草野球では守備率より「失策数」が現実的
守備率を出すには、刺殺と補殺を1つずつ記録する必要があります。スコアブックを細かく付けていれば可能ですが、草野球でそこまで記録しているチームは多くありません。
また、守備率は守備範囲の広さを反映しません。打球に追いつけずヒットになった場合は、守備機会にすら数えられないからです。
草野球でまず残すなら、選手ごとの失策数と守った試合数で十分です。「何試合守って、いくつエラーをしたか」だけでも、守備の安定感は見えてきます。
草野球で揉めないために
失策の判定は、ヒットかエラーかと同じく、記録する人の判断になります。
- 誰が判定するかを決めておく(スコアを付ける人など)
- 迷ったらどちらにするかを決めておく
- 試合中に決めて、あとから変えない
エラーの記録は、守った本人にとってうれしいものではありません。記録は責めるためではなく振り返るためのもの、という共通認識があると、チームの雰囲気も保ちやすくなります。
My Successでの記録
My Success では、試合ごとに守ったポジションを選び、ポジションごとの失策数を+−ボタンで入力できます。複数のポジションを守った場合も、それぞれに失策数を入力できます。
選手ごとの失策数は集計され、PROプランでは失策数のチーム内ランキングも見られます。
一方、刺殺・補殺を入力する項目はないため、守備率はMy Success上では計算できません。
まとめ
- 失策は、普通の守備でアウトにできたのに、ミスプレイで生かした野手に付く
- 送球がそれたら送球した野手、正確な送球を落としたら受けた野手
- 1つの悪送球で何人進んでも、失策は1つ
- 判断の誤り・緩慢な動き・暴投・捕逸は失策にならない
- 守備率 =(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策)。草野球では失策数と守備試合数から始めるのが現実的
「誰のエラーか」は、「そのボールを普通に扱えたのは誰だったか」を考えると、たいてい答えが出ます。
参考
- 日本野球機構(NPB)「公認野球規則 9.00 記録に関する規則」(PDF)